マリグナント 狂暴な悪夢

『死霊館』『ソウ』などのホラー&スリラーシリーズを生み出してきたジェームズ・ワン監督最新作。
幼少期の記憶がないまま養女に出され成長した女性が、流産と夫の死をきっかけに怪奇現象に悩まされることになる。

ジェームズ・ワン監督

ジェームズ・ワン監督は『死霊館』というタイトルそのものの逃げ場のない恐怖舞台に観客を完璧に放り込んでくれたり、『ソウ』はストレスをエンタテインメントに昇華させるという感覚が新鮮だったし、かと思えば『ワイルド・スピード SKY MISSION』に抜擢されてびっくりしたらシリーズ屈指の感動巨編に仕上がってたので二度びっくりした…など、いつも映画ファンの心を楽しく揺さぶってくれるフィルムメーカーですよね。
『アクアマン』もまさかのDC作品でびっくりしました!
あと『モータル・コンバット』で製作やってたんですね、どうりでやたらおもしろかった!
一番好きなのはやっぱり2007年の『狼の死刑宣告』で、この映画に出てくる立体駐車場でのカメラワークは伝説。

いわゆる「ネタバレ厳禁」なんだけど…

今回の『マリグナント〜』はホラーなんだろうなって事以外は全く情報を入れないで観たので本当によかった!
いわゆる「ネタバレ厳禁」映画ですがそこだけに頼った一点突破にはなってなくて、おもしろくするための地道な下地作りをコツコツしていてそれが功を奏してる。
主人公が孤立無援な方が怖さは増すかとは思うんですが、親身に心配してくれる養子先の家族がいる、ってところが映画全体のテーマにもなっていて、ホラーなのに怖さを優先させていないところが興味深いです。
妹の存在がすごくいいんですよね!
病んでるお姉ちゃんのためにめっちゃ怖い廃屋にも忍び込んじゃう行動派の妹はテレビ俳優でプリンセス役をしてるらしく、お姉ちゃんの病室にも「お昼休憩なの」っつって撮影衣装のドレス姿で現れるという天真爛漫さ。
この姉妹…アナ雪じゃん!!
捜査を担当する男性刑事と妹がちょっといい感じになる、ってワンクッションがあるおかげで刑事も捜査にすごく親身になってくれる…って流れもうまい。
この刑事とコンビを組む女性刑事、男性刑事に恋してる女性鑑識官、主人公の養母…などストーリー的にそこまで存在感が必要ない女性キャラたちも何気に良くて、そういうところ妙に丁寧。
あと義母と妹が証拠になるビデオテープを家で一緒に見て2人で「ぎゃああーーー!!」ってなるとこ好き。

史上最高の力技による「女性の自立」描写!

そして何よりこの映画は「女性の自立」を描いていて、それが本当に文字通り「男の身体を切り離して自分で立つ」っていうこれ以上ないぐらいの力技で具体的に描いてるのがすごい!
いやもう、ほんとに力技!!
心霊的ななにかを想像してたらめちゃくちゃ具体的なモン出てきて本当に腰抜かしました。
冒頭、もう妊娠後期に差し掛かろうとしてるぐらいなのにDV夫に「出産やめたら?」って言われるの心底「はあああ???」って感じなんだが、あれがまさに「女性の身体のことを男が決めようとしている」って超わかりやすい図式になってて、そこからのホラージャンルへ領域展開!ファイッッ!!って流れ、最高すぎる。
かと思えば女性留置所で大暴れする主人公によって凶暴な女たちがボコボコの返り討ちに遭うシーンもあり、「アタシの自立を邪魔する奴は男女関係なくコロス!!」って事ですね。
あれだけ血みどろの惨事を繰り広げておいて最終的には「家族の在り方」っていうテーマに着地する、というところも「ツッコミたい…けど良い…!」って気持ちが錯綜する。

何気に「続編あるかも?」って感じだったので期待してしまう!
脇のキャラたちがよかったのも続編のための仕込みなのか?と深読みしてしまいます。
すごく観たいし、この映画は今年のベスト3に入れたいぐらい好きになりました!

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