ウエスト・サイド・ストーリー

1950年代のニューヨーク、ウエスト・サイド。
都市開発が進められようとしている貧しい移民居住区域では、ポーランド系のジェッツとプエルト・リコ系のシャークスという不良グループ同士の抗争が激化していた。
『ロミオとジュリエット』を基にし、1961年にも映画化された名作ミュージカルをスピルバーグ監督が再映画化。

1961年版は90年代の高校生だった頃に、当時放送があった「水曜ロードショー」で初めて観て衝撃だったのを今でも覚えています。
それ以前も『サウンド・オブ・ミュージック』やディズニーアニメで「ミュージカルっちゅうもんはいきなり歌い出したり踊り出したりするらしいべ」という事は田舎の高校生にもわかってましたが、ディズニーなんかは話もふわふわしてたからまあ歌い出してもおかしくはないわな…って感じだったのが『ウエスト・サイド物語』はすごくシビアで緊張感のある話なのにそれが始まる、っていうのが驚きだったんでしょうね。
今観ても空撮から始まって街に降り立つオープニングと、ソール・バスによるエンドロールなど、まさに「クール」と言った感じで伝説級のかっこよさです。

そんな1961年版が大好きだったので今回の再映画化を聞いた時は正直「なんで?」と思いましたが、やっぱり!さすが!と言わざるを得ない!!
旧作で好きだった街の風景、物語の悲壮感、行き場のない切なさ、そして躍動感…すべてがより深く、よりワイドに、魅力増し増しになってました。
何と言ってもあの街への没入感がすごい!
街の撮り方がすさまじく気持ちよかった!
旧作では屋上のみだったのが今回は街じゅうを駆け回る「アメリカ」の生命力と色彩力とか!
メインキャラではない、ウエスト・サイドで生きるいろんな人がより多く映し出されていたのも印象的でした。

旧作では白人であるジェッツの方がどちらかというと恵まれているのかなと思ってましたが今回のジェッツは困窮感、不健康感が極まっていて、映画の至る所に彼らの居場所のなさが描かれているのが何とも悲しかった。
暴力がより具体的に描写されていたのもよかったです。
アニタへの集団暴行未遂シーンも「こういう行為は本当にクズなんだ」という事をしっかり示していたし、それを必死に止めようとしたジェッツのガールフレンズの描写が加わったのも本当によかった。
この映画、女性だけを見てると平和だったり生きる楽しさ、喜び、そして思いやり…なんかが溢れてるんですよね。
映画の後の世界でリフの彼女とアニタが中心となって、まず女性同士が手を取り合って次に男たちの尻を蹴っ飛ばし、なんとか和平が結ばれるんじゃないか、とかそんな想像をしました。

そして忘れてはならないのがリタ・モレノ!!
あのキャラ設定のアイデアは物語がより深まって、本当に良い改変だったと思います。
ヴァレンティーナという存在は希望であり、同時に「前の映画はもう60年前なのに、未だ人類は人種や肌の色、宗教の違いで争い続けている」って現実を突きつけてくる存在でもある。
「いやあ〜昔は人種間で争いとかあったからこういう映画が作られたんだよ」って言えたらいいし、言えるようにしておくべきだったのに。
ディズニー+で配信されているメイキングでのインタビューも必見です。
名作と言われる映画にもやっぱり当時の人種差別的問題はあって、映画を愛しつつもそれらを無かった事にしてはいけない。

新規キャストではやっぱりアニタ役のアリアナ・デボーズが断トツで輝いてましたね!
アニタはやっぱりいつの時代もみんなの憧れなんだよね〜
初めて観る俳優なのにめっちゃ見覚えあるな〜と思ったらミュージカル『ハミルトン』のあのかっこいい人じゃん!
普段のヘアスタイル、ファッションもいつもかっこよくて一気にファンになりました。
という事でアニタのファンアートも描きました。

by
関連記事