ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

2019年のタランティーノ作品。
1969年に起きたシャロン・テイト殺害事件を知ってないで観ると一体何を描いた映画なのかさっぱり分からないと思うので、これから観る予定の方は是非あの時何が起きたのか?を事前に知っておいた方が絶対楽しめるので予習をおすすめします!

主演はブラピとディカプリオという、少なくても今後10年はこれ以上の共演は見られないのでは?ってぐらいのスター俳優同士の共演で、最初に知ったとき心底びっくりしたと同時に故・淀川長治さんに手を合わせたい気持ちになりました。
ブラピが『セブン』で、ディカプリオが『ギルバート・グレイプ』で主役級として現れた頃わたしは「ロードショー」という今は廃刊になった集英社の映画雑誌を購読していて、そこで淀川さんがよく執筆していたからです。
特にディカプリオの繊細な演技力についてはべた褒めで、『ギルバート・グレイプ』のパンフへの寄稿は美しいラブレターみたいだった事を覚えてます。
だからこのワン・ハリを淀川さんも空から観てるかなあ?なんて気持ちになりました。
余談ですが廃刊になる5年前ぐらいに一度「ロードショー」編集部へ営業に行った事があって、対応してくれた編集さんが話していたのは「付録でポスターを付けて売り上げが伸びたのはディカプリオが最後だった」という事でした。
確かに私が購読していた頃から付録のポスターといえばディカプリオかブラピだったのでその2人が今もぶっちぎりのスター俳優をやって若いファンも獲得しているのは本当にすごい!

思い出ばなしが長くなりましたがこの映画はついつい思い出ばなしをしてしまう、特に映画好きは自身の映画にまつわる記憶を思い出さずにはいられない作品なんですよね。
人の記憶を最も呼び起こしやすい「匂い」は本来映画にはないはずなのにこの映画にはある。
さらに記憶を通り越して60年代のハリウッドとか実際にその時代を知らなくてもあの街並みにうっとりしてしまう。
それは豊かで美しいというよりは猥雑でインチキなんだけどもうそれがたまらなく良い!
窓を開けてラジオを付けて車を走らせてるシーンはどれも最高。ムッとした湿気が車内に流れ込んでくる感じなんかもなんとなく伝わってくるんですよね。
夕方になってあちこちのネオンが付いてわくわくするあの感じ。
タランティーノ映画のパターンである前半のダラダラ感と相性がピッタリなんです。

このダラダラがずっと続いて欲しい、なんなら最後のあれが起こらなくてもこの映画最高かも…なんて思ってしまうんですがこの映画は時間の流れと成長と変化、変わるものと変わらないものを描いてる。
最狂最悪だけど最高のイベント発生後に押し寄せてくる淋しさと、明日はこうなってほしいという希望とが混ざり合って何とも言えない余韻が残ります。
映画が終わるとまたリックとクリフに会いたくなるけど何回でも最初に戻って観られるからやっぱり映画って最高だね。

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