花様年華
2000年のウォン・カーウェイ監督作。
1960年代の香港を舞台に、お互いの配偶者同士が不倫していると分かった男女を描く。
ウォン・カーウェイ作品は実はこの映画以外は「当時観たけどあまり覚えていない」という感触しかないのですが、今観るとまた違ってきそうな気がするので観返したいなと思ってます。
この『花様年華』だけは繰り返し観ていてとても好きなんですが、強烈に覚えているのは本編より予告編でした。
本編と予告編に使用されていたのは鈴木清順監督の『夢二』のテーマ曲。
ちょっと気だるく、怪しい印象がぴったりです。
60年代のモダンなチャイナドレスに身を包んだマギー・チャンと、パリッと背広を着こなしたトニー・レオンがとにかく終始美しい。
「身を包んだ」って表現がほんとうにぴったりなんです。
高めのスタンドカラーで首と背筋がシュッと長くなる、身にぴったり張り付くようなオーダーメイドの美しいドレスたち。
ドレスが変わる事で連続するシーンでも日付が変わった事がわかる、っていうぐらいたくさん出てきます。
大きな花柄の鮮やかな色のドレスもあれば落ち着いた色のものもあって、マギー・チャン演じるチャン夫人以外の女性たちも年齢問わず着こなしているので自分も欲しいな…と思ったけどちょっとでも体型変わったら着れなくなりそうなんですよね。
けどとことん体型に合わせて作った方が絶対美しいし…。
そんなハードルの高いドレスを着ながらチャン夫人は映画のなかで結構よく食べる。
きれいに整えた髪型とメイクで食べてるのが屋台のテイクアウトとか庶民的なもの、っていうギャップもたまりません。
これ以上ないぐらいスタイリッシュなお二人なのに、住んでるアパートが大家さんちの間借りって感じで大家さんに筒抜けの部屋なもんだからなかなかスタイリッシュな逢い引きができない、というシチュエーションも微笑ましい。
業を煮やしたトニー・レオン演じるチャウが別の場所に執筆のための部屋を借りるんですが、そこの壁紙がすてきなんですよね〜。
60年代が舞台になるとどこの国の映画も壁紙がおしゃれ。
このイラストは屋台に続く階段ですれ違う場面なんですが、壁はチャウの部屋のものにしました。
チャン夫人がときどき歩きざまに壁に指を這わせたり、部屋を出て行く時に一瞬壁を触って行く所作をするんですがその一瞬がすごく印象に残ります。
まさにチャウの心に一生残るような跡を残していく。
そんな一瞬を捉えたクリストファー・ドイルとリー・ピンビンによる撮影も忘れがたい。