モーリタニアン 黒塗りの記録

2001年アメリカ同時多発テロに加担した容疑をかけられ、グアンタナモ収容所で拘束され続けるアフリカ・モーリタニア出身の青年。彼を弁護をする事になった弁護士と米軍側の弁護士は別々の入り口から同じ事実へたどり着く。

グアンタナモ…グアンタナモかあああ〜〜
絶対酷いこと起こる映画じゃんこれ…絶対拷問シーンあるやつじゃん…
観たくねえ〜けど観なきゃ…って思いながら観に行きました。
好きな人なんてあまりいないと思いますが、例え演技であってもわたしは動物が酷い目に遭うのと拷問シーンがほんとに苦手です。
最近アニメの『Monster』(浦沢直樹原作の)を観てたんですが、原作を読んでいて一ヶ所拷問シーンがあるのを知ってたので、その回が近づいてくるともうめちゃくちゃ怖くなりました、アニメですら!
タランティーノ映画とか、ステイサムとかリーアム・ニーソンとかが悪党をボコボコにするのはゲラゲラ笑って観れるけどガチで人が人を痛めつけるなんてほんと無理だよ…。

で、この映画にも拷問はありました。
ネタバレ?いや、そりゃあるよ…だってグアンタナモだよ?
ですがこの映画のそれは単に暴力を振るうといったものよりずっと残酷で陰惨で無慈悲で、やってるのがギャングとかじゃなくて政府公認の軍によるもの、っていうのが本当に信じられない。
なんかもう苦痛を与える側の人間も最後の方おかしくなってるし、けど上から「やっていいよ」「責任は君にはないよ」って言われると人っていくらでも非道いことがやれるんだな、という心理の恐ろしさも思い知らされる映画でした。

そして何より怖いのはやっぱり大きい権力を持ってる人と組織なんですよね。
わたしがなぜこんなにビクビクしながらもこの映画を観に行かなくちゃと思ったのは、やっぱり日本でも同じ事が起きてるからに他ならない。
映画に映し出される、ほぼ黒塗りで埋め尽くされた膨大な書類を、日本に住むわたしたちはつい最近ニュースで見て知ってる。
遠い国から来た遺族に対してコピー代請求して(セコいんだよ!!)渡したのがほぼ黒塗り、っていうね…。
しかも命を落としたのは彼女1人ではなく、今現在もただただ拘束されている人たちが存在してる。
劇中でスラヒが言う「アメリカがこんな事をするなんて思ってもみなかった」ってセリフはウィシュマさんの遺族も日本に対して言ってた言葉で。
だからこれは本当に観るべき一本でした。

もう1つ観たかった理由は久しぶりにジョディ・フォスターが見られるということ!
なんかもう、ちょっとした仕草からも目が離せないんですよね。
例えば冒頭のミーティングのシーンで彼女が咳払いをした後机の上の飴を手にする、っていうシーンがあるんですが

「今の、脚本にあるの?アドリブなの?」

とか、すごい気になる!
他にも顔を掻いたり、実際にはなんてことない仕草だけどそういえばあまり映画では見ないかも…という所作をたまにするんですよね。
予告で見た白髪の彼女に驚いたものの、やっぱりあの「私は絶対に揺るがない!」という強い表情は変わらなかった。
劇中では結構いろんな服を着こなしていたのもよかったです。
大きめのアクセサリーも上品で爪もいつも綺麗な赤。
ノースリーブのシャツを着ていたのもノースリーブ党のわたしには心強かった!
わたしもいくつになっても夏はノースリーブを着たい。

彼女扮する人権擁護派の弁護士と、軍側の弁護士であるカンバーバッチは一応対立関係にあるんだけど最終的に同じ方向に向かっていく、っていうのが重い内容ながらも映画的で、否応なしに盛り上がりました。

そしてこれは言い方が難しいんですが、14年間も不当な拘束と拷問を受けながらも「今は赦している」と話しているスラヒさん本人がすごい。
視聴できるのは期間限定かも知れませんが、先日tbsラジオの『荻上チキ・Session』にスラヒさんが音声出演されていたので興味のある方はぜひ!

音声配信】特集「9.11から20年。元収容者が語るグアンタナモ収容所の実態」 

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