Wの悲劇
劇団の研究生として稽古に励むも芽が出ない静香は女中役兼雑用係として舞台「Wの悲劇」公演に参加するが、主演の大女優が起こしたスキャンダルの身代わりになる事で助演女優へのチャンスを掴む。
夏樹静子原作の同名小説を劇中劇に設定した、80年代角川映画を代表する異色作。
この映画のタイトルだけはずっと知ってましたが、10年前ぐらいに東京MXテレビの「5時に夢中!」内でマツコ・デラックスがたびたび話題に出しているのを聞いてずっと観たかった映画です。
当時ちょうどレンタルと配信の狭間の頃で、レンタル店も減ってきて古い映画を観られる機会が少なくなってた時期でした。
そんな中、老舗名画座である池袋新文芸坐での上映がある、しかも三田佳子トークイベント付き!と聞いて観てきたのが初見でした。
その頃の三田さんは定期的に息子さんの不祥事でワイドショーなんかに追っかけ回されてて、そのトークイベントの少し前にも確かなんやかんやあったので「もしかしてイベントは中止になるのでは…」と思ってました。
けど登壇されたんですよ〜〜!!
それだけで「超かっこいいな!」と痺れましたし、壇上で脚を組んで堂々とお話しされる三田さん、まさに「女優!女優!!女優!!!」というオーラがバッチバチに出てて圧倒されました。
この映画はほんとにめちゃくちゃ変なんですよ。
けどこの頃の角川映画はだいたい変なので、こういうもんなんだなって思って楽しめました。
ある年齢以上の世代の方には伝わると思いますが大映ドラマのノリですね。
「なにそのセリフ!!?」って珍ゼリフ連発でとにかく濃い。
だから脳みそにこびり着いて忘れられないんですよね。
薬師丸ひろ子がアイドルから本格的に女優になった映画でもあり、確かにあの時代のアイドルが演じるには結構な汚れ役なので思い切ったなあという感じ。
けどやっぱりめちゃくちゃかわいい!
今レトロブームなので、彼女の服装は今の若い方が見てもかわいいと思えるし身近な衣装で真似も簡単にできるファッションなので楽しいかも。
けど何と言っても三田佳子のパワーがすごい!
コテコテの変なセリフから、「お疲れ〜〜」みたいな日常の挨拶まで全てが三田佳子にしかできない!という感じで。
イラストにも描いた「女優!女優!!女優!!!」のシーンは有名ですが、その前後のセリフも強烈です。
私はね、初舞台の直前に怖くて生理が始まったの
けど演じたわ
血にまみれてね
女優!女優!!女優!!!
勝つか負けるかよ!
最近になってやっと生理って言葉を普通にテレビなどでも出せる空気が出てきましたが当時の観客はびっくりしたんじゃないかと思います。
しかも「血にまみれて」ってすごいよ!
けど総じて考えてみると、大ヒット小説を映画化するに当たってその原作を映画の大筋には使用せず劇中劇に据えて、けど現実パートのオリジナルストーリーもまた原作小説の内容にちゃんとリンクしている…って構成は手間がものすごいし原作者に納得してもらうのにも苦労しただろうし、人気の小説やコミックをポイポイと映画化してる昨今を考えるといろんな意味で豊かな時代だったんだな〜と感心します。
あと劇団を描いた映画だと稽古シーンや劇中劇パートが嘘くさくなりがちですが、この映画では蜷川幸雄が舞台監督役で「本人役?」ってぐらい怒鳴り散らし物を投げてるので当時としては結構リアルなんじゃないでしょうか?
現時点で可能な視聴方法がU-NEXTのみなんですが金曜ロードショーとかでやってほしい、もっと知られてほしい!と思う一本です。