罪の声

年号が平成から令和へ変わろうとしていた頃、父の遺品の中に見つけたカセットテープと手帳から31年前に日本を震撼させた「ギンガ萬堂事件」に幼い頃の自分が加担させられていたと知った曽根。
同じ頃、昭和の未解決事件特集を担当する事になった新聞記者の阿久津は「ギンガ萬堂事件」を洗い直していた。

脚本は野木亜紀子さん!

『アンナチュラル』『MIU404』の野木亜紀子さん脚本と聞いて公開時から気になりつつ観れなかったこの映画、Netflixで配信が始まったので観ました。
すごく見応えがあった!おもしろかったです!
原作小説と同じく「グリコ・森永事件」をモチーフにしているんですが、わたしはたぶん主人公の曽根とほぼ同年代で「グリコ・森永事件」当時はまさに馴染みのあるお菓子がなんだかよく分からない事件のために食べられなかったり、後に保護フィルムが貼られたりしたのを肌で感じていた世代なのでちょっとぞっとする瞬間が何度もありました。

ホラーじゃないけど「怖さ」が効いてる

キツネ目の男の似顔絵とか、当時クラスでみんな無邪気に「誰々のお父さんに似てる」とか「親戚のおじさんに似てる」とか言ってたものですが今見ると何とも言えない気持ち悪さがある似顔絵ですよね。
三億円事件の似顔絵なんかもそうですが…似顔絵って怖い!!
「怖い」といえばこの映画のタイトルにもなっている「声」。
「グリコ・森永事件」でも現金の置き場所指定などに録音された子供の声が使われていて、同様にこの映画でもそれが最大のモチーフとなっているんですが、録音された子供の声ってなんか怖い。
ホラーではないけどそういう、ちょっとした「怖い」と思わせる小道具が最大に効いていると思います。

平成から令和に…だから何?

原作の舞台は2015年だったのを映画では平成から令和に変わろうとしていた2019年に変更されていて、劇中でも誰かが言ってましたが「令和だなんだと騒いでるけど何が変わるんだ?」ってメッセージが込められているのも野木脚本だなあという気がします。
劇中と現実の未解決事件は昔といえば昔の事なんだけどそれに関わっていた人は事故や病気に遭っていなければ多分今も生きている。
更に当時子供だったあの声の主たちは今どこでどうしているのか?…って事が原作者の執筆のきっかけだったそう。

薄氷の下の世界を思う

映画後半に明らかになる曽根以外の子供たちの過去と現実は本当にショッキングで胸が締め付けられる内容なんですが「いやでもフィクションだし」「こんなひどい境遇の人間が今の日本にいる訳ない」って思う人もいるかも。
けど現実にも、親が出生届を出さなかった等の理由で学校に行っていなかったり保険証を持っていないという人は存在するんですよね。
(ちょうど最近「報道特集」で見ました)
私たちが「安心安全な日本」だと思っているこの世界は案外薄氷の上に在るだけで、氷の下には行政から何ら救いの手を差し伸べてもらえない世界がある…って事も『MIU404』で外国人技能実習生問題にメスを入れていた野木さんなら込めているのかも。

そんな骨太な作品が小栗旬、星野源という人気俳優で映像化されたって事も今の日本で細くも心強い希望だなと思います。
地上波放送で多くの人に観られてほしい。
その際は是非ノーカットでお願いしたい!

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