シラノ

勇敢で文才に溢れる騎士シラノは美しいロクサーヌを想い続けているが、人と違う外見ゆえに自身の愛の成就を諦めている。
そんな中ロクサーヌはクリスチャンと惹かれ合い、シラノは彼の代わりに美しい恋文を書く事で2人の仲を取りもつ事になる。
19世紀に生まれた名作を新しい解釈でミュージカル化した舞台を映画化。

ピーター・ディンクレイジ!!!
ピーター・ディンクレイジですよぉ〜〜〜〜!!

彼が主役で、ポスターにもお顔がどーんとプリントされた映画が観られる日が来るとは、もう本当に暗い話題しかないこの日常で久々の喜びです。
『ゲーム・オブ・スローンズ』を観た人なら説明不要ですが、なにせあの全世界が熱狂したモンスター級大ヒットドラマがこの日本ではほぼ不発だったので下手したら一般的には「誰?」状態なんですよね。。。
映画好きには『スリー・ビルボード』などが印象的だったと思います。
今回の『シラノ』は彼のパートナーでもあるエリカ・シュミットが手がけた舞台版を映画化してる事もあってディンクレイジの魅力がいかんなく発揮されていて、わたしは心から「生きててよかった」と思いました。

シラノ・ド・ベルジュラックといえば何度も舞台化&映画化されていて、わたしは1990年のジェラール・ドパルデュー版が真っ先に浮かびます。
現代に話を移した1987年の『愛しのロクサーヌ』というのもありました。
これらの映画化作品と原作でのシラノは「鼻がとても大きい」という外見ゆえに苦しむ有名なキャラクター。
新しいシラノはディンクレイジと同じく小人症という設定です。
彼はこれまでもずっとそのせいで人間の醜い感情を受ける側の人物を演じてきたし、おそらく現実でもそういう経験は無い訳ないので、人の痛みが分かる悲しみと弱い者に対する優しさとか賢さとかが全身から滲み出てるんですよね。
それがもうシラノってキャラクターにぴったりだし、愛する人に対する真摯な演技もめちゃくちゃ心にくる。
ていうか、めちゃくちゃティリオンなんですよ!
「ティリオン」って言葉をもう形容詞にしたいぐらい He’s so much Tyrion.
(ティリオン・ラニスター=『ゲーム・オブ・スローンズ』でのディンクレイジの役名)
わたしはね〜ティリオンの日本語吹替声優の森川智之さんの事も「ティリオン」って呼んでますんで。
何のアニメでも映画でも森川さんの声聴くと「あっティリオン!」って思う…っていう森川さんのファン活動をしてますよ。
トム・クルーズも鬼滅のお館様もティリオン。

話をこの映画に戻すと、ロクサーヌのキャラクターも結構強烈でした。
バルコニーに出た彼女に向かってクリスチャンが、隣で隠れてるシラノに教えられる通りの愛の詩を詠む有名なシーンがありますが、そこでついクリスチャンが「自分の言葉で伝えたい!」って出来心で「I love you!!」って言ったらロクサーヌがめちゃくちゃ怒るんです。
「そんな事しか言えんのか!!?」って。
「そんな事は言われ慣れてる!もっと心に響く言葉をちょうだい!!」ってキレ散らかすんです。
めちゃくちゃ厳しい文芸誌の編集かラップバトルの審査員みたいな女だよ。
彼女にとっては好きな男とうまくいく事より自分をどれだけ想ってるかを綴った美しい詩が最重要。
凹みまくるクリスチャン、めっちゃかわいそうでした。
わたしも英会話レッスンの後はいつも「普通のフレーズしか使えなかった…」とか落ち込むんでクリスチャンの気持ち分かるよ。
そんな訳でシラノ以外のキャラも魅力的。

後半の戦場のシーンは『つぐない』でも顕著だったジョー・ライト監督の映像センスが発揮されていて印象深かった。
戦争は嫌だ、というメッセージが今だから特に響きました。

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