ハウス・オブ・グッチ

1995年に起きたグッチ3代目社長マウリツィオの殺害事件を軸に、グッチ一族とマウリツィオの妻パトリツィアとの愛憎を描く。

先の紹介文に「愛憎」って書きましたけど、「愛」はほぼないです。
「憎」ばっか！！あとは金、株、虚栄…。
実際に起きた殺人事件を扱っているし、比較的まだそんな昔の話でもないのでおもしろがるのはちょっと不謹慎かな…なんて他の事件だったら思うところですが、ぶっちゃけめちゃくちゃおもしろかったです。
ついこのあいだ『最後の決闘裁判』が公開されたばかりなのにすぐに新作が来る、リドリー・スコット監督85歳の胆力にも驚きます。
年取ったら「まあまあ皆さん、角を丸くしましょうよ」みたいな作風になりそうなもんなのにこの映画の登場人物みんな、角丸くするどころか角磨きまくってギンギンに尖らせて容赦無くぶつかり合って血まみれになる…そんな一族です。

アル・パチーノとジャレッド・レトの親子がよかったですね。
パチーノが出てる事でグッチ一族が『ゴッドファーザー』のコルレオーネ一族の歴史とも重なります。
ジャレッド・レトの、もう全然誰なのか分からないぐらいの変身も楽しかった。
そして主人公・パトリツィアのキャラクターが強烈で、あの俳優陣の中でも堂々としてるガガの存在感がすごい。
結婚生活も最初は微笑ましかったのにねえ〜〜
「お嬢さんと結婚したいけど無職なのでお宅で働かせて下さい！」って押しかけてくるマウリツィオのボンボンぶりもかわいかったし。
しかもあいつ、荒くれ者揃いの職場でてっきりいじめられてるんだと思ったらめちゃくちゃ好かれてやがんのな。
どこに行っても誰からも好かれるっていう人たらしの天才なんですよね。
で、マウリツィオのお父さんのところに挨拶に行ったらお父さんがジェレミー・アイアンズ、っていうね。
アイアンズとガガとか（本人どうこうじゃなく）絶対仲良くなる訳ないわ〜〜って思う、絶妙なキャスティング！
映画のなかの「彼氏・彼女の親に会いに行く」シーンって、それを演じてる俳優はこの人です！っていう出オチみたいな感じがあってなんかおもしろいんですよね。
で、だいたい「あ〜〜この親は嫌だわ」って思う。

最終的にグッチ一族の株とか経営権などは一族ではない、けどずっと近くに居たある人物がかっさらっていくっていうのが皮肉でもあるし怖い部分でもある。
終始「マンガかよ」っていう濃いキャラたちがどったんばったん大騒ぎした最後にこういうヒヤッとさせられるシーンで引き締めるのがさすがの語り口。
あと一族以外のキャラだとサルマ・ハエック演じるテレビ占い師がよかった。
ガガと並んでるシーンがどれも最高だったな〜
もうグッチの事とか忘れて2人でバイクとかで旅に出ちゃえばいいじゃん、って思ったし。
この2人と殺し屋2人がカフェで同席しているシーンはカウリスマキ監督の『愛しのタチアナ』みたいなシュールさがあって可笑しかった。

という訳で「マンガかよ」と思って作った画像も載せときますね。