バトル・オブ・ザ・セクシーズ

1973年に行われたテニス試合「Battle of the Sexes(性差を超えた戦い)」を映画化。
女子テニスチャンピオン、ビリー・ジーン・キングは女子の優勝賞金が男子の8分の1である事に異を唱え、女子リーグを設立し独立。
同じ頃、人生に行き詰まった元男子チャンピオンのボビー・リッグスは再起をかけてビリーに男女対抗試合を申し込む。

『ラブ・アゲイン』で父娘を演じたエマ・ストーンとスティーブ・カレルがテニス試合で対決!
エマ・ストーンにとっては『ラ・ラ・ランド』の次の主演作で、いつもの雰囲気とはガラッと外見を変えて実在のテニスプレイヤーを演じてました。
わたしはスポーツに疎いのでビリー・ジーン・キングの事は全く知らなかったんですが、これは正に「負けられない戦い」というやつで、これに挑んでくれた彼女に尊敬と感謝の念を抱かない女性はいないんじゃないでしょうか?

1970年代、既に「ウーマンリブ」という言葉と運動はあったもののまだ十分に女性の権利が認められてなく、存在を軽んじられていた時代。
耳を疑う言葉がバンバン出てきますよ。

「女は寝室と台所にだけ居ればいいんだ」

「ミニスカートで球拾いするのは大歓迎だ」

たまにビリーを認める男性がいたかと思えば
「魅力的なので化粧をすれば女優も狙えるでしょう」
とか、そんなん。
けどこういうの、日本のテレビでは少し前まであったし「良かれと思って」のルッキズム発言なんかは今でもまだ残っていると思うので「遅れすぎだろ…」というのも痛感してしまう。

スティーブ・カレル演じるボビーは自身を「男性至上主義のブタ」と表現してビリーと女性たちを挑発し続けるので一見、ヒール(悪役)なのかと思うんですが実はそれは見せかけで、もっとひどいミソジニスト・ラスボスが別にいる…というのがこの映画のミソかなと思います。
とはいえ、あれだけカメラの前で女性差別発言を繰り返していたら世間への影響は多大なのでやっぱり罪はあると思うけど。

ビリーがボビーの事を実は分かっているのと、ラスボスに対する彼女の分析がまた鋭い。

「あなたは女性をほんの少しも敬えない」

…っていうのが、ああそれだ、それこそが「差別」というやつの正体だ、って思うんですね。
憎んでる、とかじゃなく「敬えない」って言葉の体温の無さに心底ぞっとするし、それに対してラスボスが言う
「妻との関係は35年間良好だが?」
って言葉もこんな奴との結婚生活を35年も…?って思うとほんとに恐怖しかなくて。

それを経ての「Battle of the Sexes(性差を超えた戦い)」のシーンは異様に淡々と進み、しかし真剣そのもの。
差別との戦いはもちろん初めに怒りありきで、けど決してマジョリティである男性をぶっ潰したくてやってる訳じゃないんだ、って事が静かに伝わってくる。
スポーツ×差別との戦い、というのが相性良いなと思いました。
「女vs男」ではなくて「女vs差別」なんですよね。
映画のクライマックスとしては一見地味な試合シーンなんだけど、その後にアラン・カミングの感動スピーチがきっちり用意されてるのが分かっちゃいるけど泣く。
昨今の主流となっているフェミニズム映画としても必見の一本です!

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