アイの歌声を聴かせて

AI技術が今よりもう少し発達した近い未来のどこかの都市。
友達のいないサトミは転校生のシオンからなぜか「幸せになるための手助けがしたい」と持ちかけられる。
実はシオンはAI技術者であるサトミの母が開発したAIロボットで…。

まさかのダークホース!

これは本当にノーマークでした!
公開2週目ぐらい経ってから続々とツイッターで絶賛ツイートが流れ始めて、それがアニメ関係者やライターだけでなく映画や海外ドラマ好きもこぞって、ちょっと尋常じゃない熱量で絶賛してるもんだから「これは観ないと!」ってなって。

手垢のついたストーリーだけが持つ心地よさ

全体的にはとにかくさわやか!でした!!
地方都市で個性バラバラの高校生グループがいろんなイベントをこなしながら絆が深まっていく…という青春群像劇だったり、人外の存在との交流と救出だったり、何度も見てきた展開なんですがその中心にいるのがAI搭載ロボットっていうのがアニメならではでユニーク。
このロボットのシオン、性格は超天然で所構わず歌い出す…っていういわゆるミュージカル属性の子なので普通「なんじゃこいつ…恥ずかしい!!」ってなるんですが不思議なもんで「AIロボットなんです!」って言われると「ああ…そう…じゃあ仕方ないな」ってなる。
ミュージカルって突然歌い出す事もさておき、なんで伴奏流れんの?ってところもまあ「おかしいだろ??」って言われたら「はあ…まあ…」って答えるしかないけど、この映画では「AIなんで学校内のスピーカーとか音響機器に繋がれるんです!!」って、説得力があるのかないのかよくわからない球を豪快に打ち返してくるんで、もうこれは乗っておいた方がいい。

「すべてに理由がある」という提示が徹底してる

始まってすぐ「これはネットの世界の具現化なんだろうな」ってイメージ映像が流れるんですがそれがやたら幼稚なんですよね。
けどまあアニメなので自由だし、別に理由付けする必要はないわけです。
けど理由をつける。
後半はそういうパズルがどんどんはまっていくのが快感であり気持ちもあがる。
なぜシオンはサトミをしあわせにする事に固執するのか?
なぜ歌を歌うのか?
「しあわせ」とか「歌」とか何となく使いがちで便利なワードでもあるけど説明のない作品はいくらでもあるのにそこを掘り下げるのはなんとなくこの監督の個性なんだろうなと感じました。
ミュージカルをやってるけど同時に反ミュージカルをやってる、みたいなところがおもしろい。

ロボットってちょっと悲しくなる

どうしても涙腺が緩んでしまうのは、インプットされた命令を何があっても追従するっていうロボットの従順さになんとも言えない気持ちになるんですよね。
手塚治虫のマンガに出てくるような、人間のいなくなった遠い星でいつまでも労働を続けてるロボットに対して湧き上がるいじらしさ、はかなさ、悲しさ…など。
だからシオンってとても健気な反面、悲しいし怖さもある。
サトミが年取って死んだ後どうなんの…?とかすごい心配になるよ。
学校で働くゴミ箱型の掃除ロボットが男子生徒にいじめられているシーンが冒頭にあるんですが、そういうのも本当に腹が立って「人間なんて…」って心がすぐに闇堕ちしちゃうんで、実生活にロボットが増えてほしくない。
自動操縦で荷物運んだり給仕したりするロボットが既にいるけどいじめられない?っていつも気になるし。
なのでこの映画、過去にたまごっちとかしゃべる系のおもちゃで遊んでた人にとってはグサグサ刺さるだろうな〜『トイ・ストーリー』なみに。
友達にAIBO持ってた人いるのでこの映画を観たか聞いてみたいです。

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