ビルド・ア・ガール

イギリス郊外で冴えない毎日を過ごす女子高生が、有り余る文才と想像力を活かして音楽誌の辛口ライターに転身。
主演は『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』のビーニー・フェルドスタイン。

もう…もう…、観るに決まってるし心にくるに決まってる決定映画!
『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』が最高すぎたビーニー・フェルドスタインが『ムーラン・ルージュ』のニコール・キッドマンみたいな髪色とファッションで大暴れしてるだけでもう最高だし、舞台が90年代UKロックシーンの実話ベースとか刺さる人にはたまらないんじゃないでしょうか。

けど「90年代よかったよね〜〜」っていう甘さに浸るものではなくて、「あの頃のこういう所はよくなかった」っていう反省がちゃんと描かれてるのがさすがビーニー・フェルドスタインが選んだ作品だなという気がします。

特に顕著なのは男性ばかりの音楽誌編集部で、やっぱりセクハラの対象になってしまうジョアンナだったり、逆に「軽い女」という扱いやすい記号的なキャラに自分を落とし込んでしまうジョアンナ自身だったり…のジェンダー問題の認識の甘さ。
映画自体はセクハラを訴えるという内容ではないし、このあたりの描写は非常に「カラッと」描かれてるんですが、この「カラッと」対処せざるを得なかった空気もまた当時の悪習だったという事はきちっと示してる。

冴えない主人公が派手な業界にデビューし、仕事に奮闘しながらもめくるめく世界で自身も洗練されていく一方、家族や大事な人との距離ができていく…という流れはお仕事映画の定番ですが、そのジャンルの大抵の映画が中間地点の自分を振り返った時に「私はなんて愚かだったんだろう!」と反省し、”乗り越えるべき壁”として処理するパターンが多いかと思いますが、ジョアンナはそれも自分の中にちゃんと取り込んで認めて成長するのがよかったです。

オンもオフも無いようなパーティーファッションを経て、その片鱗は残しつつもちゃんと自分を表現できているファッションで着地するラストが爽快。
山あり谷ありの成長を最後の服で可視化させるのは『プラダを着た悪魔』でも描かれていてあの映画も好きでした。
途中の迷走と失敗がなければこの姿でここには立ててなかった、っていう肯定感が素晴らしいしこれからの世代に向けられた映画だな〜と思いました。

そしてジョアンナが夢中になるミュージシャン役は『ゲーム・オブ・スローンズ』のシオンことアルフィー・アレン。
『ジョン・ウィック』1作目で子犬を殺したクズの役で世界中から嫌われてしまい、その後も小悪党役が多かったけど今回の役は100%いい人で本当によかった!
ゲースロは日本では他の国ほど知名度が高くないのが本当に残念ですが、観れば必ず好きになるキャラがシオンなんです!
この映画でゲースロ観る人が増えればいいな〜。

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