めぐり逢わせのお弁当

2013年のインド・フランス・ドイツ合作。
インドの「お弁当配達システム」がもたらした偶然の出会いと交流を描きます。

先ず圧倒されるのはこのお弁当配達の流れ!
このイラストはツイッターでわたし史上最高に伸びたのですが、とにかくこのシステムを見たらかなりの確率で「何これ!?」って思うはず。

まず最初の配達人が各家庭からお弁当を回収、その後たくさんのお弁当をハンドルに吊り下げた自転車で駅へ。
駅ではまた別の配達人が、集められた更に大量のお弁当を担いで電車に乗る。
普通の乗客も使う電車ですが弁当配達人たちは同じ車両に乗ってるみたい。
専用車両とまではいかなくても何となく分けられてるのかな?
走る電車の様子が外から俯瞰で映され、その扉がすべて全開なのが分かります。
危ない!けど気持ち良さそう。

で、電車を降りたら各配達人がオフィス毎にまとめたお弁当を運び、各人のデスクまで配布してくれる…
これで配達完了!
お弁当バッグには簡単な記号が書かれてるだけで、配達人は特に何の確認もせずにどんどん運ぶ。
けどほとんど間違いがないそうです!

そんな驚異のシステムのなかでこぼれ落ちるように起きた「誤配送」をきっかけにある主婦と、奥さんを亡くした定年間近の男性との交流が始まる…というお話。

携帯電話とネットが普及し始めてから、かつてあった「すれ違いもの」がなかなか作れなくなったと聞きます。
そんな事もあってアニメ映画『君の名は。』が若い人に新鮮に映ってヒットした、とも。
この映画はきっと他の国でリメイクしたい!という声もあったと思うんですが、このシステムが根付いていないと成立しないので無理!となるところがとてもユニークです。

毎日特に心満たされる事もなく、同じような日常を送る見知らぬ2人が交流を始めることで生活に新しい風が入ってくる。
そこには恋愛的なときめき以前に人と関わるっていうだけの単純な喜びがあって、それがきっかけで自身のこれまでの/これからの人生を見つめ直す…っていう流れがすごく自然なんですよね。
それはやっぱり「食」っていうモチーフも大きいし、2人の周りに存在する人々の配置がめちゃくちゃうまい。
サージャンは結婚したばかりの新入社員と関わることで過去を思い、これから1人で送ることになる老後を思う。
イラは自分の母と、階上に住むおばさんという上の世代の女性たちと接してやはり今後の人生を思う。

ツイッターではイラストを見てこの映画を観た、というリプライをたくさんもらいました。
今のこの、家に居る時間が長くなっていろいろ考えることが増えた…という時期に合ってるかもしれない。

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